あまり知られていない農業ネタ編。
今回は稲刈りの時期についてちょこっと。
水稲の収穫量というのは、簡単に解説すると、単位面積(例えば10a)当たりの籾数と、1粒の籾の重量、それに含まれるくず米の割合、等によって決まります。
最も大切なのは10a当たりの籾数を確保することですが、これはまた別の機会にでも。
話が長くなるし、それぞれの農家の企業秘密みたいなものですから。
では、稲刈りのタイミングによって何が変わるのか?
稲刈りが早いと、籾全体に含まれる未熟粒の割合が増えます。未熟粒とは、まだ完全なお米になっていない状態の粒で、緑色をしています。割ってみると、中身は白色です。農家で言う青米というやつですね。
ただし、同じ緑色でも、中身が半透明の物は問題ありません。
この場合の問題は、収穫後に玄米をふるいにかけたときに、未熟粒がくず米として選別されるため収穫量が少なくなってしまいます。しかし、残った玄米は食味に優れ、品質も良好です。
反対に稲刈りが遅い場合は、未熟粒の割合が少なく、登熟期間が長くなるため粒が肥大します。1粒の重量が増え、さらにくず米の割合も少ないため、収穫量が多くなり、一見すると農家にとって良いことだらけのように感じます。
しかし一方で、登熟しすぎた粒は胴割れをおこし、品質を低下させます。粒に艶がなくなり、茶色の米が混じるようになります。
胴割れとは、米の中心付近に横方向のヒビが入る状態で、そのうち上下に割れてしまいます。米の検査において、被害粒以外で落等する主要な要因となっています。
当然ながら、このような玄米では食味は期待できません。
各地の農業指導にあたっている、県・市町村機関、農協などでは、秋になると「適期刈り」を呼びかけています。
ですが、農家の収穫時期を見ていると、少し遅めに刈り取っている場合が多いような感じがします。
なぜか?
簡単に結論すると、やっぱり少しでも収穫量がほしいから。ということになるのでしょうか。
一般的な農家は、収穫した米を農協や業者に出荷します。
その際、食味で価格が変わることはありません。試食してから買い付けするわけではありませんから。
価格を決めるのは見た目の品質です。
ならば、胴割れがおこる寸前まで収穫量を確保したいと考えるのは、ごく自然なことだと思います。
しかし、当店のように直接販売をおこなっている農家の場合は、食味が良いというのはとても重要です。
ちょっとでも美味しいお米を食べてほしい。
なので、わが家では「適期よりも少し早め」を目標に稲刈りをしています。
よく父が言います。
「米というのは、少しアオが入るくらいが一番旨い」
実際に食べてみるとよく分かります。
良食味。 やっぱり大事ですよね。